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こちらではお初にお目にかかります。弁護士・元ロースクール教授、宮武嶺の社会派リベラルブログです。

産経新聞が社説で「憲法改正 国家緊急権の規定必要だ」と主張し、高市早苗首相とともに日本をナチスばりの全体主義国家にしようとしている。

憲法審査会で与党自民党と維新の会が主張する緊急事態条項と緊急政令は、高市早苗氏が「『内閣総理大臣への権力集中』や『国民の自由や権利の制限』を書くべきだろう」と論文に書いていた内容そのものだ。

 

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 今年の憲法記念日に先立つこと1週間前、2026年4月26日に産経新聞が

『「国民の憲法」要綱、産経が発表 「独立自存の道義国家」掲げる 天皇は元首、軍保持明記』

という記事を出しました。

 うわ!また産経新聞が性懲りもなく改憲案を出したのか!?と思ったら、よく見たら「アーカイブ」と書いてあって、2013年に発表したものだったんです。

 これがまた参政党の憲法改正案よりは憲法の形にはなっていてマシなものの、第一章 天皇

第一条(国柄) 日本国は、天皇を国の永続性および国民統合の象徴とする立憲君主国である。

第二条(国の元首) 天皇は、日本国の元首であり、国を代表する。

第三条(皇位の継承) 皇位は、皇室典範の定めるところにより、皇統に属する男系の子孫がこれを継承する。

から始まり、天皇が元首である立憲君主制になっていて、しかも天皇制を通じて女性差別を固定化する内容になっています。

国民の憲法」要綱、産経が発表 「独立自存の道義国家」掲げる 天皇は元首、軍保持明記 アーカイブ「国民の憲法」 - 産経ニュース

 

 

 さら戦争放棄を定めた憲法9条は削除される一方で、国防の章が創設されていて

第一六条(軍の保持、最高指揮権) 国の独立と安全を守り、国民を保護するとともに、国際平和に寄与するため、軍を保持する。

として「軍」を持つことが規定されています。

 そして、国民の権利及び義務の章には

第一八条(基本的人権の制限) 権利は義務を伴う。国民は、互いに自由および権利を尊重し、これを濫用してはならない。

2 自由および権利の行使については、国の安全、公共の利益または公の秩序の維持のため、法律により制限することができる。

第一九条(国民の義務) 国民は、国を守り、社会公共に奉仕する義務を負う。

として、コッテコテに国民の基本的人権を制限できること、さらには国民が国防の義務を負うことが明記されています。

 奴隷的拘束の絶対禁止の規定はなく、これで徴兵制も可能なわけです。

第三章 国防 「軍に対する政治の優位は確保されなければならない」 アーカイブ「国民の憲法」要綱・解説 - 産経ニュース

 

 

 そして、この記事で問題にする緊急事態条項については

第一一四条(緊急事態の宣言) 外部からの武力攻撃、内乱、大規模テロ、大規模自然災害、重大なサイバー攻撃その他の緊急事態が発生した場合には、内閣総理大臣は、国会の事前または事後の承認のもとに、緊急事態を宣言することができる。

第一一五条(緊急命令および緊急財政処分) 緊急事態が宣言された場合には、危機を克服するため、内閣は法律に代わる政令を定め、および緊急財政処分を行うことができる。

2 前項の目的を達するため、必要やむを得ない範囲で、内閣は、第三〇条〔通信の秘密〕、第三四条〔居住、移転および職業選択の自由〕、第三五条〔財産権および知的財産の保護〕、第三六条〔適正手続きの保障〕および第三七条〔逮捕、抑留・拘禁および捜索・押収に対する保障〕の権利を制限することができる。

第一一六条(失効宣言) 前条の政令および緊急財政処分について、内閣は、速やかに国会の承認を経なければならない。

2 前項の承認が得られなかったときは、内閣はその失効を宣言しなければならない。

とこれまたコッテリと規定されています。

 [報道ステーション]ワイマール憲法から学ぶ自民党憲法草案緊急事態条項の危うさ (文字起こし)【全編】

 

 

 まさに大日本帝国憲法をさらに詳細に規定したような産経憲法案で、世間からも忘れられた存在ですが、安倍政権の一年目の時に作って高市政権の一年目にアーカイブしたわけですね。

 そして産経の本日の社説「主張」は、表題のように

 『<主張>憲法改正 国家緊急権の規定必要だ』

という、社説というより高市政権への檄文みたいな文章が載りました。

 そこに以下のような、法律家として看過できない嘘が書いてあったので指摘したいと思います。

『その際に重要なのは緊急政令などを含めて規定することだ。緊急時に行政府(内閣)に権限を一時的に集め、国民と憲法秩序を守らねばならない。これを国家緊急権という。国連が採択した国際人権規約(B規約)が認める世界の常識だ。任期延長だけでは国民を守れない。』

というのです。

 しかし、産経新聞は、ナチス(国家社会主義ドイツ労働者党)の台頭と独裁政権の確立が、当時のワイマール憲法第48条に規定されていた「国家緊急権(大統領緊急令)」を悪用した結果で、ヒトラーはこの合法的な権限を足がかりに、わずか数ヶ月で民主主義体制を崩壊させたという歴史が全く分かっていません。

 

岡田民主党代表の「改憲の緊急事態条項は政令で国民の権利を制限できるナチスへの道」という断言は正しい。

 

 

 そして、産経の言い回しでは、まるで国際人権規約のB規約が各国に憲法で国家緊急権を規定するように求めている、義務付けているかのように読めます。

 しかし、正式な名称が市民的及び政治的権利に関する国際規約であるB規約が、市民の権利を制限する国家緊急権を積極的に推奨するわけがないではないですか。

 実際には、同規約の4条は確かに国家緊急権について規定していますが、それは国内法(憲法など)に緊急権の条項を設ける義務を課すものではもちろんありません。

 逆に、もし国内法で国家緊急権について定めるなら、以下のような厳格な要件を守らないといけないと、国家権力の限界を画し義務を課しているのが国連人権規約B規約なのです。

第四条

1 国民の生存を脅かす公の緊急事態の場合においてその緊急事態の存在が公式に宣言されているときは、この規約の締約国は、事態の緊急性が真に必要とする限度において、この規約に基づく義務に違反する措置をとることができる。ただし、その措置は、当該締約国が国際法に基づき負う他の義務に抵触してはならず、また、人種、皮膚の色、性、言語、宗教又は社会的出身のみを理由とする差別を含んではならない。

2 一の規定は、第六条、第七条、第八条1及び2、第十一条、第十五条、第十六条並びに第十八条の規定に違反することを許すものではない。

3 義務に違反する措置をとる権利を行使するこの規約の締約国は、違反した規定及び違反するに至った理由を国際連合事務総長を通じてこの規約の他の締約国に直ちに通知する。更に、違反が終了する日に、同事務総長を通じてその旨通知する。

歴史に学ばなくても、お隣の韓国が緊急事態条項の恐ろしさを見せてくれたばかり。

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」の宣布について、韓国の合同捜査本部が内乱罪容疑で逮捕状を請求。韓国に学ぶ緊急事態条項の恐ろしさと法の支配の大切さ。【#自国維公は地獄逝こう】

 

 

 つまり、各国が国家緊急権規定を設けるとしたら、この限界は絶対に超えてはならないというのがB規約第4条です。

 そしてこれを具体化した国連人権規約委員会(自由権規約委員会)の「一般的意見29号」は、緊急事態下における国家による人権制限(逸脱)の厳格な要件を定めています。

 それによると、国家は「合法性」「必要性」「比例性」「非差別」の4原則を遵守しなければならず、いかなる場合も生命権や拷問の禁止などの基本的人権は停止できません。

 以下概要をご紹介しますが長いので斜め読みしてください。

1 合法性(Legality)の原則

 人権制限や権利の停止(逸脱)は、国内法および国際法上の厳格な要件を満たしている必要があります。

 公式な宣言: 緊急事態は、公式かつ公に宣言されなければならず、その内容は国民に周知される必要があります。

 国際機関への通報: 締約国は、自由権規約第4条に基づき、いかなる規定の適用を停止したか、およびその理由を直ちに国際連合事務総長を通じて他の締約国に通報する義務があります。

 国内法の適格性: 人権を制限する措置は、明確かつ予見可能な国内法上の根拠に基づいていなければなりません。

2. 必要性(Necessity)の原則

 講じられる措置は、緊急事態の対応において「厳格に必要不可欠」なものに限定されなければなりません。

 目的の特定: 措置は、生命の存立を脅かすような「公の緊急事態」に対処するためにのみ適用されます。

 代替措置の検討: 人権を制限しない他の手段(より制限的でない代替策)で目的を達成できる場合、その人権制限措置は正当化されません。

 時間的・地理的限定: 緊急事態に対処するために必要な期間および地域に限定して適用され、事態の収束に伴い速やかに通常の規約遵守状態へ回復しなければなりません。

3. 比例性(Proportionality)の原則

 人権制限の程度は、事態の深刻さと直接均衡がとれており、制限による不利益が目的の重要性を上回らないものでなければなりません。

 権利の重要性との比較: どのような規模の緊急事態であっても、決して停止・制限できない絶対的な権利(免脱しえない権利)が存在します(例:生命権、拷問の禁止、奴隷労働の禁止、思想・良心・宗教の自由など)。

 手段の妥当性: 制限措置は、緊急事態の深刻さに比例したものであり、過度な権利剥奪を招くものであってはなりません。

4. 非差別(Non-discrimination)の原則

 人権制限措置の適用および実行において、いかなる差別的扱いも禁止されます。

 対象の客観性: 人種、皮膚の色、性別、言語、宗教、社会的出身などに基づく区別は認められません。

 影響の評価: 緊急事態における特定の措置が、意図せず特定のマイノリティや社会的に脆弱なグループに不利益や差別的な影響を及ぼさないか、継続的に評価・監視されなければなりません。

歴史に学ばなくても以下略。

ウクライナが戒厳令・総動員令を3か月延長。ゼレンスキー大統領が男性の出国の自由を求める署名に対して「署名者は生まれ故郷を守ろうとしていない」と拒否。これが日本国憲法に緊急事態条項を創設する恐ろしさだ。

 

 

 

 つまり、産経新聞は

「国連が採択した国際人権規約(B規約)が認める世界の常識だ。」

と言いますが、世界の常識は国家緊急権を定めることではなく、もしどうしても国家緊急権について規定するならその危険性に鑑み、これを規定するとなったら上にご紹介した制限と限界を明記しなければならないということなのです。

 これは国家権力の手を縛って市民の権利と自由を守る立憲主義の思想そのものです。

 ところが衆院憲法審査会に出された緊急事態条項のイメージ案は、ただ、内閣が緊急政令を出せて、それは国会機能の維持が困難になった場合の措置で、そしてその内容は法律と同等の効力を持つ、というだけです。

 そして国際人権B規約はあれほど詳細な制限と限界を規定していたのに、憲法審査会に示されたイメージ案での歯止めは、国会の事後承認を「求めなければならない」というだけなんです。

 これは国際的にみて非常識かつ噴飯物で、こんな杜撰な規定では、市民の自由と権利を侵害しまくりでしょう。

 現に、産経新聞憲法案の緊急事態条項も権利を制限する話ばかりで、国際人権B規約が課した国家緊急権の限界は全く規定されていません。

 つまり、我々理性ある市民は高市政権や産経新聞など右翼に騙されてはいけないということです。

 

こんな人間に改憲をさせたら絶対にダメ。

【#高市モームリ】ネオナチ団体代表と写真を撮り、「ヒトラーの選挙戦略」本を推薦する高市早苗首相もまた国際的に見ればネオナチだ【#高市早苗に白紙委任で死にたくない】

 

 

 

アベノリスク5 ネトウヨ・ネオナチと化して、人が憎しみ合うヘイト社会を創る安倍極右政権

 

 

 

 

安倍晋三氏が復権し、日本維新の会が結成された2012年から翌2013年は本当に激しい右傾化の時代だった。

【橋下維新の会とハシズムの歴史を振り返る3】旧民主党をヒトラーの全権委任法以上と批判した橋下徹氏はその年「すべてをマニフェストに掲げて有権者に提起するのは無理」「選挙はある種の白紙委任」と言っていた

 

 

参考記事

村野瀬玲奈の秘書課広報室さんより

自民党による「憲法改正」は国民主権と基本的人権の剥奪と、平和主義廃止。緊急事態条項は国会無効化と全権委任法。スパイ防止法は治安維持法と密告奨励法。国家情報局は全個人データを取り締まる特高警察。要するに自民党は大日本帝国党。 #自民党に殺される

 

 

編集後記

【#憲法記念日】高市早苗首相が22年前の改憲論文に「『内閣総理大臣への権力集中』や『国民の自由や権利の制限』を書くべきだろう」(恐怖)【#緊急事態条項断固反対】

 

自民党の改憲案は少し大人しくなっていたのですが、2012年の自民党トンデモ改憲草案をベストだと言い切る高市早苗氏が首相となり、一部のリベラル・左派が頼みにする石破茂前首相も同じことを言っていて、緊急事態条項創設が持論で、同草案の通り9条2項は削除すべきだと最近盛んに主張しています。

もう一回自民党憲法草案を叩く時期が来たようです。

 

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<主張>憲法改正 国家緊急権の規定必要だ

社説

2026/5/18 05:00 産経新聞


緊急事態条項に関する集中討議が行われた衆院憲法審査会=4月23日午前、国会内(春名中撮影)

衆院憲法審査会が、大規模災害などに備えた緊急事態条項の憲法への創設を巡り、衆院法制局が作成した条文のイメージ案をもとに議論を始めた。

同案の柱は、選挙の実施が困難な場合の国会議員任期延長と、国会機能の維持が困難な際の内閣による緊急政令と緊急財政処分の制度新設である。

緊急事態は①大規模自然災害②感染症の大規模蔓延(まんえん)③内乱④外部からの武力攻撃―などを対象とした。

南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの災害はいつ起きてもおかしくない。台湾有事の懸念も高まっている。条文起草委員会を早期に設け、作業を始めなければならない。

その際に重要なのは緊急政令などを含めて規定することだ。緊急時に行政府(内閣)に権限を一時的に集め、国民と憲法秩序を守らねばならない。これを国家緊急権という。国連が採択した国際人権規約(B規約)が認める世界の常識だ。任期延長だけでは国民を守れない。

14日の衆院憲法審では、議員の任期延長について、与党と国民民主党は憲法に規定すべきだとの考えを改めて示した。中道改革連合やチームみらいは、避難先での投票確保、郵便投票の拡充、インターネット投票の導入などを訴えたが、議論が悠長にすぎないか。例えば、戦争で投票手段を確保できない事態が考えられる。

緊急政令と緊急財政処分は与野党で意見が割れた。自民党は「必須だ」と表明した。日本維新の会も同じ認識だ。中道は否定的である。国民民主は「合意形成を急ぐのなら蒸し返さないほうが得策」と慎重姿勢を示したが、合意形成が可能な範囲を探るのは本末転倒だ。与党は野党を説得すべきである。


野党はもっと想像力を働かせた方がよい。自然災害は一過性かもしれないが、戦争の場合は違う。最悪なら国会議員の大多数が不在となるような、とてつもない被害が発生することもあり得る。究極の緊急事態も想定しなければならない。

その一方で、参院憲法審では、参院選の「合区」解消に向けた討議を優先している。

議員任期延長や合区解消など議員身分を守ることばかり前面に出しても、国民の理解は得られまい。このままでは立法府は怠慢の誹(そし)りを免れない。

 

 

 

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