
ロイターの刑法犯摘発少年、年間最少ペースより
今朝のNHKの報道を見て、目を剥きました。
すでに警察庁の犯罪統計は2015年8月27日に公表され、各マスコミは同日記事を出しています。
それによると、今年1~6月に全国の警察が刑法犯で摘発した少年は、2014年同期より3601人(15・6%減!)の1万9409人で、半期別の統計がある1979年以降、初めて2万人を割っています。
つまり、少年犯罪は去年が最少で、今年また大幅に減っているということです。
これは13年連続の減少で、年間統計を取り始めた1949年以降で最少だった昨年の4万8361人を下回る史上最少ペースだと報道されています。
これについてたとえば、ウォールストリートジャーナルが掲載した時事通信配信の記事の見出しは未成年の刑法犯、最少=特殊詐欺は増加—警察庁でしたし、ロイターの報道はグラフまで出してこのような見出しでした。
今年1~6月に全国の警察が刑法犯で摘発した少年は、昨年同期より3601人(15・6%)減った1万9409人(暫定値)で、半期別の統計がある1979年以降、初めて2万人を割ったことが27日、警察庁の集計で分かった。上半期ベースで13年連続減少しており、年間統計が残る49年以降で最少だった昨年の4万8361人を下回るペースだ。ただ、特殊詐欺での摘発は183人と、こうした分類を始めた2012年以降で最多。
万引や自転車盗など非行の初期段階で手を染めやすいとされる犯罪の摘発は、前年同期比で2414人(17・0%)少ない1万1787人だった。
ところが!
なぜか、NHKがなぜか3日遅れて本日8月30日に報道した記事の見出しが以下のようなんです。
現在、自民党が川崎中1殺人事件などを受けて、少年法を「改正」し、18歳、19歳の少年には少年法を適用しないという、少年法始まって以来の厳罰化をしようとしているのですが、NHKはそれに迎合したとしか思えません。
少年犯罪 再犯が約40% 平成元年以降で最高
このうち、再び事件を起こすなどして検挙された再犯者は7179人で、その割合は全体の37%と、6年連続で増加し、統計のある平成元年以降、最も高くなりました。特に殺人や強盗など凶悪犯罪の再犯者の割合は61%と、高い水準になっています。
一方、去年、被害額が過去最悪となった振り込め詐欺などの特殊詐欺事件で検挙された少年や少女は183人と、これまで最も多くなりました。このうち、被害者から現金を受け取る「受け子」が141人と、全体の77%を占め、次いで、詐欺グループに勧誘する役が14人、「受け子」などの見張り役が13人でした。
警察庁は子どもたちが安易に犯罪に加わらないよう学校との連携を強化するなど、対策を一層、進めることにしています。

これは、今年2月に放映されたNHKの番組。
このNHKの報道でも、少年犯罪が減少し続けており、今年は史上最少ペースだということは言ってはいるのですが、ニュースの冒頭に持ってきて強調されているのは、
「再び事件を起こすなどして検挙された再犯者の割合が、これまでで最も高い40%近くに上った」
ということですし、そのあとも
「再犯者は7179人で、その割合は全体の37%と、6年連続で増加し、統計のある平成元年以降、最も高くなりました。」
「特に殺人や強盗など凶悪犯罪の再犯者の割合は61%と、高い水準になっています。」
「一方、去年、被害額が過去最悪となった振り込め詐欺などの特殊詐欺事件で検挙された少年や少女は183人と、これまで最も多くなりました。」
と、まるで少年犯罪が悪質化しているかのように報道されています。
しかし、末尾の産経新聞、テレビ朝日の報道にあるように、少年による殺人や強盗、強盗殺人、強姦殺人などの凶悪犯罪も減少(殺人は4人増えましたが、凶悪犯罪全体では333人から58人減って17.4%減!)しているのです。

少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることに強く反対します。より。
少年事件は10年以上減り続けている。
また、少年犯罪全体が史上最少で、再犯率が高いということは、新たに少年事件を犯した少年は物凄く減っているということですが、それには全く触れられていません。
しかも、少年犯罪に占める再犯者の割合は高まっていますが、それは少年犯罪全体が減っているからで、少年の再犯率(同じ少年が再犯する率)は大人よりずっと低いのです。
また、いわゆるオレオレ詐欺のような特殊詐欺事件については、暴力団員などの大人が主犯でいて、子どもたちは「受け子」77%、見張りが7%で、少なくとも84%が従犯です。
当然分け前など微々たるものですし、「受け子」は一番逮捕の危険があるお金の受け取り役であって、むしろ、少年たちは犯罪で道具として使われる被害者的存在とも言えます。特殊詐欺に関わる少年を減らすためには、暴力団などの詐欺グループの摘発が急務なのです。
にもかかわらず、まるで少年犯罪が悪質化しているかのように意図的に統計を編集して報道するNHKは、少年法厳罰化の方向に「偏向」しているとしか言いようがありません。
これはNHK出版が出している「こころのブレーキがきかない」という本。
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少年法講義 (法セミLAW CLASSシリーズ) |
| 武内謙治 著 | |
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日本評論社 |
意欲的な最新刊。現実に立ち向かい「知」の力を求める読者へ。歴史、統計、そして国際人権法。少年法を考えぬく道具立てを備え、新たな時代に贈る新たな教科書。理論知と実践知の饗宴、少年法の世界へようこそ。
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少年法入門 第6版 (有斐閣ブックス) |
| 澤登俊雄 著 | |
| 有斐閣 |
少年法入門の決定版、最新刊。少年法をみつめ続けてきた著者によるスタンダードテキスト。少年事件の現状,少年法の基本理念,少年事件手続に始まり,諸外国の少年法制まで解説する充実の1冊。平成26年少年法改正,少年院法や少年鑑別所法制定といった動きにも触れた。
上にリンクした私の記事を読んでいただきたいのですが、18歳、19歳を少年法の枠外に置くのは大変な改悪です。
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今年上半期(1〜6月)に全国の警察が刑法で摘発した未成年者は、昨年同期より16%少ない1万9409人だったことが27日、警察庁のまとめ(暫定値)で分かった。上半期としては13年連続の減少となり、統計を始めた1979年以降で初めて2万人を下回ったが、特殊詐欺事件での摘発は増えている。
未成年者の摘発は大半の罪種で減少。特に万引きや自転車盗などが大幅に減った。警察庁は「犯罪を防ぐ対策が一定の効果を上げた」としつつ、「川崎市の男子中学生殺害など社会の耳目を集める事件が起きており、少年非行情勢は引き続き厳しい状況にある」と分析している。
特殊詐欺に関わったとして上半期に摘発された未成年者は19人増の183人。統計の残る09年以降で最も多く、5年連続で増えている。このうち141人が被害金の受け取り役。高校生が34人、中学生も4人いた。
[時事通信社]
2015.8.27 10:24 産経新聞
少年摘発、年間最少ペース 上半期、初めて2万人割る 特殊詐欺は最多
今年1~6月に全国の警察が刑法犯で摘発した少年は、昨年同期より3601人(15・6%)減った1万9409人(暫定値)で、半期別の統計がある昭和54年以降、初めて2万人を割ったことが27日、警察庁の集計で分かった。
上半期ベースで13年連続減少しており、年間統計が残る24年以降で最少だった昨年の4万8361人を下回るペースだ。ただ、特殊詐欺での摘発は183人と、こうした分類を始めた平成24年以降で最多。
万引や自転車盗など非行の初期段階で手を染めやすいとされる犯罪の摘発は、前年同期比で2414人(17・0%)少ない1万1787人だった。警察庁の担当者は「全体の減少の大きな要因」としている。
凶悪犯も58人減って275人。強盗、放火、強姦がいずれも減少する中、殺人は4人増えて26人だった。
刑法犯罪で摘発の14~19歳、初めて2万人下回る(2015/08/27 14:19)

今年上半期に窃盗や傷害などの刑法犯罪で摘発された少年が初めて2万人を下回ったことが分かりました。
警察庁によりますと、今年上半期に刑法犯罪で摘発された14歳から19歳の少年は1万9409人で、初めて2万人を下回りました。罪名で見ると、万引きなどの窃盗犯が1万1793人と最も多く、次いで傷害や暴行などの粗暴犯が2508人でした。殺人や強盗などの凶悪犯は275人と減少する一方で、振り込め詐欺は中高生合わせて38人が摘発されるなど、増加傾向にあるということです。摘発された少年のうち再犯者が占める割合は4割近くに上り、6年連続で増加しています。
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