
もともと、盗聴法=通信傍受法の適用拡大は国民の人権侵害の可能性が大いにありました。
<通信傍受法> 犯罪捜査のために裁判所が出す令状に基づき、電話や電子メールの傍受を認める法律。2000年の施行時には薬物、銃器、集団密航、組織的殺人の4類型に限定されていたが、昨年12月、殺人や放火、詐欺、窃盗、児童買春など対象犯罪を9類型に増やす改正法が施行された。00年から15年までに傍受した10万2342件のうち、82%が犯罪に関係のない通話だった。
このように、犯罪に無関係な通話を必然的に傍受することになるのが盗聴です。
なぜなら、盗聴の事前にどんな会話をするかわからないから、普通の日常会話も盗聴してしまうからです。
この点が捜索差押令状で、犯罪に関係のある証拠だけを差し押さえる通常の捜査と全く違うところで、必ず、プライバシー侵害を起こしてしまうのです。
しかも、2016年の改悪で、通信会社の職員が立ち会わなくても通信傍受ができるようになってしまったので、違法な通信傍受を防ぐ防御壁が一つなくなってしまっています。
このような盗聴法が施行されている中で、共謀罪が施行されるとどうなるか。
今のところ、上記の盗聴法の対象犯罪の中に共謀罪は入っていませんが、それでも上記の犯罪を捜査する中で傍受した通信と称して、その中に共謀の証拠が見つかったとされて、共謀罪の立件がされてしまうかもしれません。
窃盗や詐欺などの犯罪は刑法犯の大半を占める犯罪です。そうすると、国民の会話はほとんど盗聴の対象となり得て、それがいつ共謀の証拠だと言われてしまうかわからないのです。
さらに、司法取引の問題があります。
司法取引も昨年の刑事訴訟法改悪で導入された制度なのですが、これは自己の関わる他人の犯罪を自ら捜査機関に自白したものは、自らの罪を免れうるという制度です。
容易にわかると思うのですが、これは自分が浮かび上がるために他人を陥れる可能性が強い制度です。つまり、犯罪を犯した人が刑を受けないために他人を無実の罪に陥れる可能性があります。
これが今はもちろん共謀罪には適用されないのですが、共謀罪について適用されるように「改正」されるとどうでしょうか。
こんな共謀がありましたと一人が捜査機関に申し出て、そんな会話をした覚えなどない他の人が一網打尽に捕まってしまうという可能性があります。
しかも、この最初の一人が国家権力のスパイの可能性もあるのです。最初からそういう共謀をでっちあげるために入り込まされたスパイが、国家権力に都合の悪い市民団体を一気にぶっ潰すことができます。
もちろん、そのスパイは罪を免れます。
共謀罪はメールやラインのやり取りでも成立します。メーリングリストやライングループの中に一人でもおかしな人がいないと確信できるでしょうか。
確信できないからこそ、共謀罪ができると疑心暗鬼の世の中にならざるを得ません。これも共謀罪の弊害です。
盗聴と司法取引が既にあるところに、犯罪を実行しなくても罪が成立する共謀罪ができてしまうと、プライバシーが侵害され、公道の自由が著しく制限されるだけでなく、市民同士がお互いに監視せざるを得ない社会になってしまうのです。
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「共謀罪」捜査に通信傍受も 無関係な「盗聴」拡大の恐れ
2017年2月3日 東京新聞朝刊

犯罪に合意することを処罰対象とする「共謀罪」と趣旨が同じ「テロ等準備罪」を設ける組織犯罪処罰法改正案について、金田勝年法相は二日の衆院予算委員会で、捜査で電話やメールなどを盗聴できる通信傍受法を使う可能性を認めた。実行行為より前の「罪を犯しそうだ」という段階から傍受が行われ、犯罪と無関係の通信の盗聴が拡大する恐れがある。
テロ等準備罪を通信傍受の対象犯罪に加えるかどうかについて、金田氏は現時点では「予定していない」としながらも、「今後、捜査の実情を踏まえて検討すべき課題」と将来的には否定しなかった。質問した民進党の階(しな)猛氏は「一億総監視社会がもたらされる危険もある」と懸念を示した。
通信傍受法は、憲法が保障する通信の秘密を侵す危険が指摘され、捜査機関が利用できる対象犯罪が限定されている。テロ等準備罪の捜査は、犯罪組織による話し合いや合意、準備行為を実際の犯罪が行われる前に把握する必要があり、通信傍受が有効とされる。
関西学院大法科大学院の川崎英明教授(刑事訴訟法)は「盗聴は共謀罪捜査に最も効率的な手法。将来的には対象拡大を想定しているはずだ」とみる。
川崎教授は「テロ等準備罪に通信傍受が認められれば、例えば窃盗グループが窃盗をやりそうだという段階から傍受できる。犯罪と無関係の通信の盗聴がもっと広く行われるようになる」と指摘。傍受したことは本人に通知されるが、犯罪に関係ない通話相手には通知されないため、「捜査機関による盗聴が増え、知らないうちにプライバシー侵害が広がる」と危ぶむ。
沖縄の新基地建設反対運動に対する警察の捜査に詳しい金高望弁護士は「警察は運動のリーダーを逮捕した事件などで関係者のスマホを押収し、事件と関係ない無料通信アプリLINE(ライン)や、メールのやりとりも証拠として取っている。将来的には、通信傍受で得られる膨大な情報を基に共謀罪の適用を図ることも考えられる。テロ対策の名目で、あらゆる情報や自由が奪われる恐れがある」と話す。
<通信傍受法> 犯罪捜査のために裁判所が出す令状に基づき、電話や電子メールの傍受を認める法律。2000年の施行時には薬物、銃器、集団密航、組織的殺人の4類型に限定されていたが、昨年12月、殺人や放火、詐欺、窃盗、児童買春など対象犯罪を9類型に増やす改正法が施行された。00年から15年までに傍受した10万2342件のうち、82%が犯罪に関係のない通話だった。
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