
国は11月から、福島第1原発事故で飛散した放射性物質の汚染地区について(1)国が除染する特別地域(年間被ばく線量20ミリシーベルト超)(2)自治体が除染し、国が費用負担する重点調査地域(同1~20ミリシーベルト)‐に指定する予定しています。
(1)は目標線量を明示せず、2014年3月末までの完了を目指すとし、(2)は13年8月末までに半減させ、長期的に年間1ミリシーベルト以下を目指しています。
また、細野豪志環境大臣(原子力事故収束・再発防止担当大臣)は10月29日、福島県庁で佐藤知事と会談し、東京電力福島第1原発事故で汚染された土壌などを保管する中間貯蔵施設について、今後3年程度をめどに建設して供用を開始した上で、中間貯蔵開始から30年以内に福島県外で最終処分を完了させることなどを柱とする工程表を提示しました。
この民主党政権の放射線防護に関する「除染中心主義」について、私は前から二つの疑問がありました。

(文科省を問い詰める福島の子ども達)
1 どうしてなかなか除染をはじめないのか
疑問:まごまごしているうちに、原発事故から半年以上になってしまいました。放射線は当然事故直後が1番多く、この間、国民の被曝は継続・進行しています。除染なんてすぐにでも始められるのに、なかなか始めないのは単に怠慢なんでしょうか。
解答:怠慢もあるが、どうも半減期8日間の放射性ヨウ素に続いて、半減期2年のセシウム134による放射線が減るのを待っているのではないか。現在の放射線の75%がセシウム134であるという話もありますから、だらだら時を稼ぐだけで放射線は減り、「除染」できるのを待っているのではないのでしょうか。
一切除染しなくても、2013年8月ならセシウム134の放射線は半減未満になるのですから。
除染後の放射性廃棄物は脱原発後の「元」原子力発電所を中間処理施設にしてその敷地に集めよう

2 それにしても、どうして除染だけは景気よくやると断言するのか。
疑問:細野大臣は10月25日開かれた衆議院環境委員会で福島原発事故にともなう放射性物質の除染について 「放射線量は人によってダメージが違う。5ミリシーベルト(年間被ばく量)で線を引いて、それ以下はやらないと言ったことはない。自治体の要望に応える」 と語り、1ミリシーベルトを目標に除染に取り組む姿勢を示しました。
土1キロ5000ベクレル以上の土地を除染するだけで東京ドーム400個分の土壌を除去しないといけないと計算です(出口が見えない放射能汚染土壌の除染問題 けれども安易な「解決」より問題を真摯に考え続ける誠実さを)。
一体除染したどこに持って行けばいいのか解決していません。福島原発の敷地だけでは足りないでしょう。また、費用は一体何百兆円かかるかわかりません。なのに、なぜこんなに大規模な除染を言うのか。
解答:これは一種の公共事業と民主党政権は考えているのではないか。現在、復興名目ならいくらでも予算請求できるというので、各省庁が震災太りを狙って頭をひねっているそうです。住民を避難させるよりも除染するほうが国費が投入できるので、儲かる企業や権限が拡大する官僚(環境省、農林省)がいて、除染中心主義を打ち出しているのではないでしょうか。
私は5月に集団疎開も検討すべきではないかという記事を書きました。
内部被曝の恐怖27 学校放射線基準 年1ミリシーベルト以下目標なら、もう集団学童疎開も考える時期
もっと前から、強く、国費による集団疎開を求める運動はあり、裁判にもなっています。しかし、マスメディアはほとんど報道しません。

末尾の記事1の福島県渡利地区のように、街の中が特定避難勧奨地点(原発事故後の1年間の放射線の積算線量見込みが20ミリシーベルト超に指定された場合、住民は避難の際に政府による支援を受けることができる)とそうでない地区に分かれてしまい、深刻な問題を生じているところもあります。
また、私の地元、神戸大学の山内教授が末尾の記事2にあるように、福島市の除染モデル地区となったその渡利小学校地区を調査したところ、固着した放射性セシウムが十分に除去できていないことも判明し、山内教授は「除染の効果は限定的。安易に期待させることで、住民をさらなる被ばくに導く」と警鐘を鳴らしているというのです。
私がこれまで強く集団疎開を主張できないでいたのは、生まれ故郷を離れる苦痛やマイナス、子ども達への影響を思ってのことでした。
できることなら、お友達と別れ別れになる悲しみを子ども達に味あわせたくありません。

(8月、福島・双葉町から原発避難の小中学生が再会して喜ぶ)
しかし、今は緊急事態ですから、命や健康に被害が出るくらいなら緊急避難も考えるべきでしょう。
また、たとえば学校や家で被曝を怖れて外にほとんど出られないという状態の方が良好な教育環境とも思えません。
現在は個人がばらばらに福島県外に数万人も避難していますが、学校や地域が歯抜けのようになってしまっていくのも良いこととは思えません。
さらに、避難したくても経済的・条件的に無理な家庭もあります。

そこで、放射線の高い地区から除染を進めると同時に集団疎開を進めるべきだと改めて主張したいと思います。以下のような集団疎開施策を積極的に採るべきです。
1 年間被ばく線量5ミリシーベルトの放射線管理区域レベル以上の学校ごと、地域ごとの集団疎開を開始する。
2 しかし、戦時中の強制疎開と違い、残るか移転するかの個人の選択の自由を認める。
3 集団疎開の移転費用や移転先の整備に国費(第一次的には東電の資産から)を投入する。
4 集団疎開の間に精力的に除染を進め、全員で早期に帰宅できるようにも国は準備する。
もう手をこまねいている場合ではありません。至急、除染と集団疎開の二段構えで、幼い命を放射線から守るべきだと考えます。

国の財政赤字が1000兆円を超えたのだから
本当に必要な額を、必要なことに、必要な時期に投入すべきだと思われた方は
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記事1
妊婦と子どもだけでも避難させてほしい――放射能汚染が深刻な福島市渡利地区住民の切実な訴えにも無策の政府 - 11/10/29 | 00:00
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東京電力福島第一原発事故で放射能に汚染された同地区の住民らが10月28日、東京・千代田区の参議院議員会館で政府関係者に妊婦や子どもを放射能から守るための取り組みの実施を求める署名簿(1万1179筆)を提出した(タイトル横写真)。
地区全体を対象とした詳細な放射能の測定および地区全体の特定避難勧奨地点指定、妊婦や子どもの避難に対する国の支援措置などを求めて政府関係者と交渉した。特定避難勧奨地点(原発事故後の1年間の放射線の積算線量見込みが20ミリシーベルト超)に指定された場合、住民は避難の際に政府による支援を受けることができる。
政府側からは、内閣府原子力災害対策本部の原子力被災者生活支援チームや原子力安全委員会などの担当者が出席。2時間以上にわたって議論が続けられたが、出席した住民からは「政府には妊婦や子どもに配慮する姿勢が見られなかった」(阿部裕一さん、38)などと、落胆する声が相次いだ。
住民が政府に求めたのは、以下の6点。すなわち、
(1)渡利地区全体を国が特定避難勧奨地点に指定すること
(2)詳細な放射能測定を地区全域で再度実施すること
(3)妊婦や子どものいる世帯については、福島県伊達市や南相馬市と同様に、一般の基準よりも厳しい特別の基準を設けて特定避難勧奨地点に指定すること
(4)放射能の積算線量の推定および特定避難勧奨地点の指定に際しては、原子力安全委員会の通知に従い、食物摂取や浮遊物質の吸収をはじめとするすべての経路による内部被ばくと土壌汚染の程度を考慮に入れること
(5)自主避難者に対する補償および国や市による立て替え払いの実施
(6)住民の意見を聴取する場の設定およびその結果を特定避難勧奨地点指定の検討に反映させること
だが、政府の担当者は、「渡利地区全体を特定避難勧奨地点に指定する考えはない。除染をしっかり行うことで住民の不安を払拭したい」「南相馬市では地域の事情などを勘案して特定避難勧奨地点の設定をしたが、福島市の場合は同地点の基準に該当する2カ所の住民に避難の意思がなかった(ために指定しなかった)」との説明に終始した。
「除染着手には時間がかかる。それを待たずに、今すぐにでも放射能汚染についての詳細な調査はできるはず」「せめて除染が終わるまでの間、妊婦や子どもだけでも国の責任で避難生活の保障をしてほしい」。
住民からはこんな切実な声が上がったが、「みなさんのお気持ちは承った。ただし、(すみやかに調査しますということは)ここでは決めかねる。難しいところ もあろうかと思う。検討はしていく」(原子力被災者生活支援チームの茶山秀一課長)などと、政府側は歯切れの悪い答弁を繰り返した。
渡利地区の住民が政府に不信感を抱くのには理由がある。渡利地区では8月下旬に、政府の原子力災害対策本部および福島県による放射能汚染に関する調査が実施されたが、同地区で暮らす約6700世帯のうちで5000世帯以上が調査の対象から外れされた。
危機感を抱いた住民の声を踏まえて、「福島老朽原発を考える会」などの市民団体が放射能測定の専門家である神戸大学の山内知也教授に依頼して9月14日に 地区の汚染状況を調査したところ、学童保育室の前で子どもが遊び場として利用している神社の敷地内で、2.7マイクロシーベルト/時(高さ50センチメー トル)の高い放射線量を計測。

■「自宅の庭先で5.8マイクロシーベルト/時の高い放射
線量が判明した」と語る地元町内会長の高橋照男さん
「南相馬市で適用された妊婦や子どもに関する特定避難勧奨地点の指定基準をはるかに超えているのに、国の調査対象外になっているのはおかしい」という声が上がった。
また、福島市が除染のモデル事業を実施した渡利小学校の通学路沿いの住宅前にある雨水ますや側溝でも、各22.6マイクロシーベルト/時、5.5マイクロシーベルト/時(ともに高さ1センチメートル)の高線量を記録。「側溝の泥すくい程度では十分な除染の効果は期待できない」と住民は考えた。
しかし、政府は住民の不安を取り除くための方策を用意しなかった。「国のやり方で測ってきた」(茶山課長)とはいうものの、「それならばなぜ特定避難勧奨地点の基準に該当した2地点を指定しなかったのか」との住民の指摘には、「住民の方が望まなかったから」と返答。
「それはおかしい。指定したうえで、避難するかどうかは住民に意思に委ねるのが本来のあり方ではないか」との住民の疑問にもきちんと説明できなかった。
渡利地区では10月8日に福島市による住民説明会が開催された。その場で「なぜ、特定避難勧奨地点に指定しないのか」との住民の質問に市の幹部は「あくまで国が設定するもの。市が口をはさめるものではない」と答えた。
だが、10月28日の住民との話し合いで政府側は、「地元の実情も考慮して(指定をしないとの)結論を出した」(前出の植田課長)とした。国と県や市の間でどのような検討を踏まえて指定を見送ったのかについては明らかにされなかった。
「渡利の子どもたちを守る会」の菅野吉広代表(43)は、小学生の子ども2人を持つ。その菅野さんは政府に詳細な再調査の実施を迫った。
しかし、政府側は「除染を進めたい」と繰り返すばかり。しかし、その除染についても、「地区内で汚染土の仮置き場が決まらなければいつまでたっても着手できない」と菅野さんは指摘する。「その間、住民は被ばくし続ける。せめて妊婦と子どもだけでも安全なところに避難できるようにしてほしい」と菅野さんの訴えは切実だ。
政府の無策が住民の生命を脅かしている。

■交渉には、7人の政府担当者が出席した。左端は福島みずほ・社民党党首
(岡田 広行 =東洋経済オンライン)
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週刊プレイボーイ
記事2
放射性物質除染の効果限定的 福島で神戸大調査
放射線量が局地的に高い福島市渡利(わたり)地区の住民の要請を受け、神戸大大学院海事科学研究科の山内知也教授(放射線計測学)が9月、地区内 の放射線量を測定したところ、雨や地形の影響で放射性物質の「天然濃縮」が進み、線量が3カ月前の5倍に上昇している地点があることが分かった。また高圧 水で除染した地域では、道路のアスファルトなどに固着した放射性セシウムが十分に除去できていないことも判明。山内教授は「除染の効果は限定的。安易に期 待させることで、住民をさらなる被ばくに導く」と警鐘を鳴らしている。
調査は9月14日に実施。渡利地区内の約100地点で空間線量と土壌汚染を測定した。
周囲を山林に囲まれた同地区は雨で流されたセシウムがたまりやすい地形という。数値が上昇していたのは通学路そばの溝で、1キログラム当たり約30万ベク レルのセシウムを検出。政府がコンクリートでの遮蔽(しゃへい)保管を求める10万ベクレルを上回り、6月の測定値の5倍以上だった。別の溝でも地表面の 線量が毎時20マイクロシーベルト超を示し、3カ月前の2倍を超えた。
また、屋根や壁を高圧水で洗浄した学童保育の建物では、地面に近い1階より2階の方が線量が高かった。屋根や天井下を測定したところ、瓦に固着したセシウムが除染できていないことが判明した。
福島市が8月に除染モデル事業をした渡利小学校区では、泥出しをした側溝で毎時5・5マイクロシーベルトを計測した。除染によって線量が一時的に下がった ものの、雨のたびに周辺の山林から汚染された土が流れ込む上、コンクリートに固着したセシウムが大量に残っている可能性があるという。
市 のモデル事業では、側溝の泥出しや草刈り、道路の高圧水洗浄で通学路や民家を平均32%除染した。だが、子どもが日常的に歩く場所で毎時1~2マイクロ シーベルトの高止まり傾向が見られ、福島県南相馬市が子どもと妊婦の避難の基準とする「地上50センチで毎時2マイクロシーベルト」を超えた場所も5カ所 あった。
山内教授は「従来の除染方法では不十分。コンクリートをはがして街をつくり直すぐらいの対策をしなければ、子どもたちは安心して暮らせない」と指摘している。
(木村信行)
▼環境省土壌環境課の話 現段階では、除染モデル事業で効果が実証された土壌のはぎ取りや洗浄を優先し、それでも線量が下がらない地区は個別に効果的な対策を考えたい。現時点ではアスファルトやコンクリートのはぎ取りなどは想定していない。
【国 の除染対策】国は11月、福島第1原発事故で飛散した放射性物質の汚染地区について(1)国が除染する特別地域(年間被ばく線量20ミリシーベルト超) (2)自治体が除染し、国が費用負担する重点調査地域(同1~20ミリシーベルト)‐に指定する予定。(1)は目標線量を明示せず、2014年3月末まで の完了を目指す。(2)は13年8月末までに半減させ、長期的に年間1ミリシーベルト以下を目指す。
(神戸新聞 2011/10/24 10:01)







