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こちらではお初にお目にかかります。弁護士・元ロースクール教授、宮武嶺の社会派リベラルブログです。

安倍自民党総裁が内閣総理大臣の靖国神社公式参拝=憲法違反を「先取り」 首相になる資格なし


 

 自民党の安倍晋三総裁が2012年10月17日夕刻、秋季例大祭が開かれている東京・九段の靖国神社を参拝しました。

 安倍氏は2006年~07年の首相在任中に靖国参拝を見送ったことについて、9月の総裁選では

「首相在任中に靖国参拝できなかったのは、私にとって痛恨の極みだ」

と発言し、今後、首相になった場合の参拝については

「この発言から、お酌み取りいただきたい」

と語っています。つまり、行くということですね。もっとも、安倍総裁はこの日の参拝後には記者団に

「日中、日韓関係がこういう状況で、 今、首相になったら参拝するかしないかは言わない方がいい」

と、前の総理大臣時代と同じようなことを言っています。日中・日韓を気にするのなら、そもそも参拝するなよと言いたくなるのですが。

 しかし、この人が、万が一内閣総理大臣になったときに、ここまで「期待」させておいて靖国神社に参拝しなかったら、それはそれで、支持基盤である右翼勢力から突き上げられるでしょうから、やはり公式参拝するのでしょう。これは本人も気づいているように、それでなくても揉めている中国や韓国との間の摩擦を激化させるのは必定です。

 さらに、なにより大事なことは、内閣総理大臣の靖国神社公式参拝は、中曽根首相の時も、小泉首相の時も、憲法違反であると裁判所に判断されていることです。以下のような数々の違憲判断を下した憲法判例があるのに、それを無視して安倍氏が憲法を蹂躙するつもりであることが問題なのです。


 まず、1985年(昭和60年)の中曽根首相の靖国神社参拝は、国費を使用して行われたため、1992年(平成4年)2月28日、福岡高等裁判所は、九州靖国神社公式参拝違憲訴訟で、公式参拝の継続が靖国神社への援助、助長、促進となり違憲であると判示しました。

 また、1992年(平成4年)7月30日には、大阪高等裁判所が、関西靖国公式参拝訴訟で、公式参拝は一般人に与える効果、影響、社会通念から考えると宗教的活動に該当し、違憲の疑いありと判示しています。

 1991年には岩手県議会が天皇や首相の靖国公式参拝を求める決議を上げた費用の返還を求める住民訴訟である岩手靖国訴訟で、「天皇や首相の公式参拝は違憲」という仙台高裁判決も確定しています。

 

 次に、2001年(平成13年)8月15日の小泉首相の靖国神社参拝も平成16年に福岡地裁が政教分離違反で違憲であると述べていますし、2005年(平成17年)9月30日の東京高裁判決では、①小泉首相の参拝は、首相就任前の公約の実行で、②小泉氏自身、参拝を私的なものと明言せず、公的立場での参拝を否定もせず、③その他参拝前後の発言などから参拝の動機、目的は政治的なものと指摘したうえで

「総理大臣の職務としてなされたもの」

「国が靖国神社を特別に支援し、他の宗教団体と異なるとの印象を与え、特定の宗教に対する助長、促進になると認められる」

と断じ、違憲であるとしています。

 なお、自治体の出費があったので住民訴訟で行けた岩手靖国訴訟を除くこれらの多くの裁判では、訴訟要件の関係から原告らが慰謝料を求めているのに対して(具体的事件でないと却下されてしまうから)、裁判所は原告らの精神的損害までは認めず請求棄却判決となっていますから、憲法判断は傍論でされていることが多いのですが、だからといって裁判所が違憲であると判断したことに変わりは全くありません。

 むしろ、判決の結論自体には直接関係なくとも、靖国公式参拝は違憲だと言わざるを得ない裁判所の危機感が表れていると評価されているのです。

佐藤栄作 中曽根康弘 小泉純一郎 石原慎太郎 橋下徹 悪政無答責・逃げ切りの系譜を断とう

 

 

 では、なぜ内閣総理大臣が肩書を記帳したり公費を使って、靖国神社に公式参拝することが憲法違反なのでしょうか。

 そもそも、信教の自由・政教分離の原則を定めた日本国憲法第20条は、第1項で

「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」

と規定し、3項で

「国及びその機関は…いかなる宗教的活動もしてはならない」

と明記しています。さらに、財政面からは89条で

「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため・・・これを支出し、又はその利用に供してはならない」

とさらにダメ押しで規定しているのです。

 これらの政教分離条項は、諸外国に比べてはるかに詳細な規定になっています。それは、戦前の国家神道体制が国内での人権侵害や、国外での日本の侵略戦争や植民地支配を生んだという反省に基づいています。

 そもそも明治政府は徳川幕府を打倒するため、そして、その後の富国強兵を進めるために、天皇を神格化して徹底利用しました。天皇は神社神道で最高神とされる天照大神の子孫であるとして、現人神(あらひとがみ)とされました。

 そして、大日本帝国憲法では「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」と規定され、天皇は絶対不可侵とされ、統治権を総攬(そうらん)し、軍隊を動かす統帥権も持つとされ、他方、帝国議会は天皇の協賛機関であり、内閣は天皇を輔弼(ほひつ=手伝うこと)するものでしかありませんでした。

 その反面、国民は天皇の家来である「臣民」とされ、人権規定もあるにはありましたが、それは議会が制定する法の範囲内でしか保障されなかったのです。

 このように天皇を絶対化・神格化し、神社神道を国教化する国家神道体制のもとでは、有名な廃仏毀釈により仏教でさえ迫害され、他の宗教は押し並べて弾圧されました。天照ではなく大国主命(おおくにぬしのみこと)を祭神とするだけで他の神道さえ迫害されたのです。

 その結果、たとえば植民地とされた朝鮮半島で多かったキリスト教信仰も許されなかったように、神社参拝が内外で強要されました。

 このように国家神道が人権侵害の元となり、信教の自由・思想良心の自由・表現の自由などが踏みにじられていたことで、国民は戦争に反対できず、それが戦争を可能にしました。

 さらに、国家神道からくる「神国」「神風」だの「八紘一宇」だのという考え方が侵略戦争推進の精神的支柱となっていたことへの反省にたって、二度と戦争が起こせないように政教分離原則が憲法に規定されたために、上記のような詳細な規定となったのです。

(靖国神社内の遊就館に陳列された第二次世界大戦の遺物たち。だいたい、兵器を展示する宗教施設なんて恐ろしくないですか)



 そして、戦前、靖国神社は陸軍省・海軍省所管の軍事的宗教施設でした。「教育勅語」「軍人勅諭」等によって、天皇の命令で「名誉の戦死」をとげ、「英として靖国神社に祀られることが最高の美徳とされました。国民を動員して戦争を可能にする必須のアイテムが靖国神社でした。

 戦後、靖国神社は民間の一宗教法人になりましたが、靖国神社という特定の宗教施設に、国民を代表する首相という「公的機関」が、参拝という「宗教的活動」をおこなうこと、参拝料を公費から「支出」することは、すべて国による一宗教団体の特別扱いにほかならず、政教分離の原則を定めた憲法に反することは明らかなのです。

 安倍氏は参拝後、記者団に今回の参拝の意味について

「国のために命をささげた英霊に対し党総裁として尊崇(そんすう)の念を表するため」

と理由を説明しています。 

 こういう人たちを「靖国派」というのですが、頭の中は戦前の国家神道体制のままなのです。

 靖国神社の境内には上記の写真のような遊就館という施設があり、戦争と天皇を賛美する展示品が並べられています。これらの展示物を見ると明らかに今も軍国主義を讃える宗教法人であることがわかります。

 さらに、1978年には、靖国神社で、侵略戦争の直接の責任者のA級戦犯がこっそりと合祀(ごうし=一緒にまつられること)されました。

 他方、靖国神社には大空襲で亡くなった方も、原爆投下で亡くなった方も、およそ戦争で亡くなった一般人の方々は祀られていません。自分たちの先祖、先輩に対して尊敬の念を持つこと自体は良いことですが、A級戦犯14人とともに、軍人として戦争で死んだ人だけを特別扱いして神様として祀るのは異常なことに、彼らは気付いていません。

 それが、軍国主義の表れなのです。

 戦争放棄を定めた憲法9条の改悪を宣言している安倍氏らが靖国神社公式参拝にこだわることは、すなわち、過去の侵略戦争を肯定することです。そして、それは過去の礼賛にとどまるものではなく、日本の平和な未来を危うくするのです。

安倍晋三自民党新総裁誕生 暗黒の騎士(岸)再び

 

 

まさかすぐに靖国神社に行くとはあきれました。

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自民安倍総裁が靖国神社参拝 「公約」先取り実行

2012.10.17 18:41 安倍晋三]産経新聞
参拝を終えて靖国神社を出る安倍総裁=17日午後、東京都千代田区(桐原正道撮影)

参拝を終えて靖国神社を出る安倍総裁=17日午後、東京都千代田区(桐原正道撮影)

 自民党の安倍晋三総裁は17日、秋季例大祭が行われている東京・九段北の靖国神社を参拝した。安倍氏は自民党総裁選で首相に就任した場合は例大祭などでの参拝に意欲を示しており、政権奪還前に“公約”を先取りして実行した形だ。

  安倍氏は午後5時2分、モーニング姿で靖国神社の到着殿前に党の公用車で到着。「自民党総裁 安倍晋三」と記帳し、玉串料は私費から納めた。参拝後、記者 団に「国民のために命をささげた方々に自民党総裁として尊(そん)崇(すう)の念を表するため参拝した」と述べた。一方で「首相になったら参拝するしない は申し上げない方がいい」と明言を避けた。

 安倍氏は平成5年に衆院議員に初当選して以来、幹事長や官房長官在任時も参拝していた。ただ、首相在任中(平成18年9月~19年9月)は「参拝したかしないかは言わない」との方針をとった。

 中韓両国との外交関係を改善するためで、改善後に再開する意向だったが、参拝前に体調不良で首相を辞任。9月の党総裁選の記者会見では「首相在任中に参拝できなかったのは痛恨の極み」と述べ、首相に就任した場合には参拝する考えを示唆していた。

 現職首相の靖国神社参拝は、小泉純一郎元首相が平成18年8月15日に行って以降、途絶えている。野田佳彦首相は昨年9月の内閣発足時に首相と閣僚の公式参拝を自粛すると決定し、参拝していない。

 

 

毎日新聞 2012年10月17日 20時21分(最終更新 10月17日 20時35分)

靖国神社を参拝した安倍晋三自民党総裁=東京都千代田区で2012年10月17日、山本晋撮影
靖国神社を参拝した安倍晋三自民党総裁=東京都千代田区で2012年10月17日、山本晋撮影

 自民党の安倍晋三総裁は17日、東京・九段北の靖国神社を秋季例大祭の初日にあわせて参拝した。安倍氏 はこれまで、再び首相に就任した場合は参拝する意向を示唆していたが、参拝後、記者団に「日中、日韓関係がこういう(領土問題などで緊張する)状況で、 今、首相になったら参拝するかしないかは言わない方がいい」と明言を避けた。

 安倍氏の総裁在任中の参拝は、06~07年の前回就任時も含めて初めて。安倍氏は、参拝理由について、 記者団に「国のために命をささげた英霊に、自民党総裁として尊崇の念を表するために参拝した」と説明。中韓両国からの反発が予想されることについては「ど の国でも行っていることだ」と理解を求めた。

 安倍氏は、06~07年の首相在任中、中韓との関係に配慮して、靖国参拝について「行くとも行かないと も言わない」あいまい戦略をとり、参拝を見送った。安倍氏は今月9日の党会合などで「首相任期中に参拝できなかったのは痛恨の極みで、くみ取ってほしい」 と述べ、首相復帰時の参拝に含みを残していた。【佐藤丈一】

 

 

「歴史問題の約束順守を」=安倍総裁の靖国参拝-中国外務省

 【北京時事】新華社電によると、中国外務省の洪磊・副報道局長は17日、自民党の安倍晋三総裁が靖国神社を参拝したことについて「日本は歴史問題におけるこれまでの態度表明や約束を順守し、責任を持って問題を処理すべきだ」との談話を発表した。
 洪副局長は「靖国神社問題は日本が軍国主義による侵略の歴史を正しく認識し、対応できるかどうかに関わり、中国を含む被害国の人たちの感情にも及ぶ問題だ」と指摘した。
 中国側は、安倍氏が首相在任中に靖国神社を参拝しなかったことを踏まえ、再び自民党総裁となった安倍氏が次の首相になる可能性も念頭に置いて、その行動をけん制したものとみられる。
 また、国営新華社通信は「日本の右傾化、軍国主義復活という国際社会の心配は決して杞憂(きゆう)ではない」と強い警戒感を示す論評を配信した。
 論評は、首相経験者の安倍氏が「靖国参拝の政治、外交上の敏感さを知らないはずがない」にもかかわらず、「日本のアジア外交が四面楚歌(そか)の状態に陥っている」ときに、「挑発的な態度で参拝した」と非難した。 (時事通信 2012/10/17-21:56)